人体の不思議1

人類の誕生

何億年もの昔、水中で誕生した小さな生物体は、しだいに動き回り、活動的になっていきました。 水中という特殊な環境下で活発に泳ぎ回り、その行動の範囲を広げて行きました。水中では浮力が働き、 生物の体は水分が大半を占めることから、水中ではほとんど浮いているという感じになります。 水中で動き回るために都合の良い体の形、ヒレなどを獲得していきました。 やがてそのもの達の一部は水面から外に行動範囲を広げようとしていきました。 水面から外に出ようとすると、とたんに重力という大きな力に押しつぶされました。 水中とは違って、自分自身の外形を保つ改造が重要になってきました。 それでも腹を地面にこすりつけるようにして、移動をしていくうちにしばらくの時を経て、なんとか地上の生活に馴染んで行きました。 ヒレはやがて足などに変化していくことで適応していきました。しかしすばやく行動したり、 遠くまで移動するには腹をこすりつけての移動は不都合であるため、あるものは腹を地上から持ち上げるようになってきました。 そのためにはより強く、合理的な骨格を獲得しなければなりませんでした。 それにより行動範囲を格段に広げることに成功しました。 そのもの達の中には四つの足を巧みに操り走り回るものも現れました。やがて、生活様式がさらに変わり、 物を持ったり道具を使ったりすることの必要性が生れてきました。 それ専用の体の一部が必要になったのです。すなわち、足を手として使うことです。 残る二つの足で行動するには、体を起こした方がコントロールしやすいため立ち上がりました。 棒を手のひらにおき、バランスをとって棒を立たせようとするとき、短い物より長い物の方がバランスがとりやすいでしょう。 二足で立ったために、背骨の弯曲を一つ増やすことになりました。二足歩行の始まりです。 古代人は道具を持ち、獲物を求め、二足で広い範囲を歩き回ったと思われます。 人の体は重力に抵抗し、たくさんの距離を歩き回ることにより獲得した、もっとも適合した体です。

人間の誕生

妊娠、出産、子供の成長、とりわけ子供がどんどん大きくなっていく姿は、とてもたのしみなものです。 水中で誕生し、羊水という水中で泳ぐようにして育ち、出産を迎え、一気に地上に放り出され、 重力で押しつぶされながらそれでもやがて腹をこすりながらハイハイし、四つん這いになり、立ち上がる、 なんてすごいことではないでしょうか。人類何億年もの歴史をわずか二年足らずでやってのけてしまうのですから。
この重要性を考えてみてください。放り出されたところから立ち上がるまで、どれも省略できないし、 またどれもきちんとやってのけなければなりません。そうしないと骨格が充分に形成されないことは想像にたやすいことですから。
とりわけ、四つん這の時期は大切で、親は、他の子よりも早く歩くようになって欲しいと思うところでしょうが、 この時期に首を持ち上げ首の筋肉をきたえるとともに、首の骨の前方への弯曲をつくり、 首を支える肩の形をしっかりつくるほかに、腰や股関節と行った足と連結する大事な部分を形成する、 次の立ち上がるための準備期間であって、無理に歩かせることは、準備が出来ていないうちに次のステップに移らせることになるためひかえるべきでしょう。
やがて活発に這い回り、物につかまり立ちするようになり、自力で歩くようになると、今度は腰椎にもうひとつの弯曲を作り始め、 人類の骨格、つまり頚椎前弯、胸椎後弯、腰椎前弯を目指すことになっていきます。

潮デンタルクリニック院長